脳は、そう簡単には覚えてくれない
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勉強というのは、最初は本当に必要最小限のことだけを覚えるようにしないといけない。
あとは無理に覚えさせたらダメ。
なぜかというと、余分なことを覚えると、記憶の干渉と言って、必要な知識を忘れるから。
「記憶の干渉?」簡単に言うと、脳というのは一度にたくさんモノを覚えられるようにはできていないんだ。
一度にたくさん覚えたら、最初の方で覚えたモノを忘れるようにできているわけ。
つまり人間の脳は、『とりあえず覚えておける記憶』の量が決まっているんだ。
この『とりあえず覚えておく記憶』のことを、『短期記憶』と呼ぶんだけど、この記憶は、1ヶ月以内に『ふるい』にかけられ、ほとんどが消えてしまうんだ。
「消えてしまう? それって、覚えたことを1ヶ月以内に忘れてしまうってこと?」うん、そうだね。
ただし、このうちでよく使う記憶だけは、忘れないように脳内にしっかり記憶する。
この時点で『しっかり記憶した』ってことになる。
これが長期記憶だ。
都道府県の覚え方
大人が都道府県名とか漢字や熟語を、特に努力しないでも覚えておけるのは、これらが長期記憶として脳内に残っているからだね。
でも子供の場合は、これらの知識がまだ長期記憶になっていないから、すぐ忘れる。
だからまず、基礎的な知識が長期記憶になるまで、しっかり覚えさせねばならない。
これがフェイズ2でやるべき仕事ということになる。
ところがこれが、難しい。
なぜかというと、子供にとっては抽象的なコトを覚えなきゃいけないからね。
たとえば都道府県名と県庁所在地を覚えるのだって、子供には大変なんだ。
都道府県名など、大人はもう既に覚えてしまっていることだから、簡単に覚えられるように錯覚してしまうけど、でもこれって、そう簡単なことじゃないんだね。
九州から覚えていって北海道に達したら、もう九州は忘れてしまっているのが普通だ。
だからデキる先生なら、まず住んでいる地域の都道府県名から覚えさせる。
なぜかというと、聞いたことのある名前だし、具体的に知っていることが多いからね。
記憶というのは、他の知識と関連付いている場合は記憶されやすいので、覚えられるんだ。
そしてそこから少しずつ広げていって、遠距離の都道府県を覚えさせていくわけだ。
ところがテキストが九州から始まっているからと言って、九州から順番に覚えようとすると、覚えられない。
九州に住んでいるとか、九州に知り合いがいて行ったことのある子供しか、覚えない。
言葉と具体的なイメージが結びつかないから、こういう情報はすぐに忘れてしまう。
九州の次は、中国地方とか四国地方になるけど、それを覚えると、忘れてしまう。
近畿地方や中部地方に進むと、ところどころだけ覚えていて、穴だらけになってしまう。
つまり何かを新しく覚えるには、まず具体的にイメージできるモノから。
そして覚える量は最少にして、何度も何度もくり返し覚える。
これをやらないと!最初は小さな輪っかから始めて、それができあがったら少しずつ肉付けしていく。
すでに覚えていることを手がかりにして、そこに記憶を足していく。
モノを覚えるには、これ以外にはないんだ。
でないと、穴ができる。
勉強というのは、バウムクーヘンを作る作業に似ている。
最初は小さな輪っかを作って、その上にまた生地を塗って焼く。
そうやってちょっとずつ、ちょっとずつ大きくしていくんだ。
バウムクーヘンの内側の輪っかをイメージして、小さな輪っかからしっかり作ろう!【受験勉強の極意】 記憶のバウムクーヘンの輪っかは、できるだけ小さく作り始める。